「海外で人気」は誰が決めているのか?

欧米で実際に消費されている日本のお菓子と、テレビが作る“外国人人気”の決定的な違い

日本のテレビ番組やネット記事では、定期的に「海外で人気の日本のお菓子」という特集が組まれる。ランキング形式で商品が紹介され、スタジオでは「外国人にも大人気」「やっぱり日本のお菓子はすごい」といったコメントが添えられる光景は、もはやおなじみだ。

しかし私は、こうしたランキングをほとんど信用していない。その理由は、その「人気」が誰の視点で決められているのかが曖昧だからである。本当に欧米の消費者側から自然に生まれた評価なのか、それとも日本側が作り上げた物語なのか。その区別が、テレビ番組では一切なされていない。


今回私は、日本発の情報を意識的に排除し、欧米のサイトや個人ブログ、レビュー記事のみを見て調べた。もちろん、これは完璧な統計ではない。ネット上の公開情報に限られる以上、正確性には限界がある。

それでも重要なのは、スポンサーや企業、番組構成の意図を汲む必要が一切ないという点だ。欧米側の記事やブログで頻繁に登場していたのは、日本人が想像する高級なお土産ではなく、日常的に食べられるスナック菓子だった。

言及頻度や扱われ方を基準に整理すると、欧米側で実際に消費されている日本企業のお菓子として目立っていたのは、ポッキーやプレッツ、カルビー系のスナック、煎餅、ハローパンダといった顔ぶれである。

ここで注目すべきなのは、キットカットがこの文脈では前面に出てこないという点だ。欧米側のサイトでは、キットカットが「日本のお菓子ランキングの主役」として扱われることはほとんどない。

評価されているのは、味が分かりやすく、説明が不要で、欧米のスーパーの棚に自然に溶け込む商品である。日本らしさや文化的背景は、ほとんど重視されていない。

ハローパンダのように、日本企業の商品でありながら日本国内ではほぼ流通していないものが、普通に「Japanese snack」として語られている点も象徴的だ。ここには、日本側の誇りや演出が入り込む余地はほとんどない。


一方、日本のテレビ番組や情報バラエティで繰り返し提示される「海外で人気」のランキングは、まったく異なる姿をしている。よく見かけるのは、次のような並びだ。

第1位:キットカット。第2位:白い恋人。第3位:東京バナナ。第4位:ロイズ 生チョコレート。第5位:じゃがりこ。

この時点で、欧米側の調査結果とは明確に食い違っている。ここで基準になっているのは、欧米で日常的に消費されているかどうかではなく、日本で外国人観光客に売りやすいか、日本人視聴者が納得しやすいかという視点だ。

白い恋人や東京バナナ、じゃがりこはいずれも、日本国内での知名度が高く、空港や観光地の土産物店で大量に流通している商品である。つまり、このランキングは日本の売り場を起点に組み立てられている。

特に象徴的なのが、キットカットの扱いだ。欧米のみのサイトを調べた限り、キットカットが上位として強調される事実は確認できなかった。それにもかかわらず、日本のテレビ番組では「海外で一番人気の日本のお菓子」として、当然のように1位に据えられる。

これは評価の違いではない。日本側が「海外で人気」という物語を作っているだけである。


テレビ番組でよく見かける「外国人に人気のお土産ランキング」も、統計としては成立していない。なぜなら、誰が買ったのかを証明できないからだ。

観光客なのか、在日外国人なのか、日本人が自分用に買ったのか。店舗の売上データを集計したところで、購入者の属性を判別する方法は存在しない。外国人が海外から来た観光客であるという証明もできない。

それにもかかわらず、テレビ番組は平然とランキングを作り、「海外で人気」「外国人に大人気」と断定する。ここには必ずスポンサーや企業、流通との関係があり、扱いやすい商品が選ばれている。


観光地ランキングも、一見するとお土産ランキングよりはまともに見える。入場者数などの数字が存在するからだ。しかし本質的な問題は同じである。

観光地を訪れている外国人が、短期滞在の観光客なのか在日外国人なのかを判別する方法はない。本当に正確にやろうとすれば、宿泊情報や滞在日数と個人単位で紐づける必要があるが、個人情報の問題もあり現実的ではない。

つまり、「外国人に人気」という統計そのものが、そもそも成立しない構造になっている。


私自身の調査は、ネット上の情報に限られている。正確性に限界があることも自覚している。しかし、スポンサーや企業の意図を汲む必要はない。

一方でテレビ番組は違う。最初から「この枠で何を見せるか」「どの商品を出すか」が決まっている。その結果、欧米で実際に消費されているお菓子と、日本のテレビが作る“外国人人気”は、必ずズレる。


問題は、「海外で人気」という言葉そのものではない。問題は、誰がその人気を決めているのかを説明しないことだ。

欧米で実際に消費されている日本企業のお菓子と、日本のテレビ番組が作るランキングは、同じ言葉を使っていても中身がまったく違う。その違いを理解せずに、テレビのランキングを信じるべきではない。

少なくとも、「それは誰が決めた人気なのか」。この問いを持たずに情報を受け取るべきではない。

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